鹿野山 巨樹・古木マップ

樹木の解説

  イチョウ 学名Ginkgo bilobaイチョウ科 銀杏、公孫樹、鴨脚樹)

街路樹など、全国で普通に見かける樹木で、分類上は落葉針葉樹区分されています。

イチョウ科の植物は中生代から新生代にかけて恐竜が生息した時期に世界的に繁栄し、氷河期にほぼ絶滅したと言われていています。化石から復活した樹木は中世代の生き証人として、その当時の歴史を知る上で貴重な樹木です。中国語で、葉の形をアヒルの足に見立てて 中国語: 鴨脚(イアチァオ)と呼ぶので、そこから転じたとする説があります。又公孫樹は祖父(公)が植えた樹木が孫の時代にならないと実が付かない例えからです。

神野寺の境内にあるイチョウは、大正時代の絵葉書に映っている大きさとあまり変わらにことから想像すると樹齢200300年はあります。幹が腐朽している個所もありますが全体的には樹勢が良く、乳イチョウとして枝が垂れて風格と歴史を感じる事が出来る巨木です。

 

  ヤマグワ学名:Morus bombycis Koidzクワ科 山桑)

落葉広葉樹で山中に生育していますが、鳥の種子散布などによって街中で見る事が多くあります。古くから有用樹として利用が多く養蚕の他に、山菜・碁笥・家具材として使われてきました。現代の養蚕に使われるクワは、中国原産の葉の大きい品種を改良したものです。

林業関係の方は、桑が肥沃な土壌を好む事から植林をする適地を探すのに土壌の指標植物としてきました。

神野寺の境内には、昭和14年千葉県指定の幹周り2.1m大桑がありましたが、数年前に枯れました。神野寺にゆかりの深い俳人高浜虚子は、かつて当寺を訪れ、「大桑の茂り天然記念物」と詠んだと言い伝えられています。

 

  イヌガヤ学名Cephalotaxus harringtoniaイチイ科イヌガヤ属 犬榧

常緑小高木針葉樹である。別名はヘビノキ(蛇の木)、ヘダマ(屁玉)、ヒノキダマ(檜玉)、ヘボガヤ(へぼ榧)など。属名の Cephalotxus は「頭状の花をつけるイチイ」の意で、種小名harringtonia は人名に由来する。和名は犬ガヤであり、カヤに似ているが核が苦くて食えないことによる[4]

材は緻密で硬く、粘りがあって耐久性にも優れる。古代にはをこれで作った。

縄文時代の前期(6000-5000年前)頃の遺跡から矢じりや弓が多量に出土し、彼らがこれらを用いて狩猟をしていたとされる[5]。その弓には南部ではイヌガヤが、北部ではハイイヌガヤが使われた。これは太さ3-6cm、長さ50-120cmの枝をそのままに削って作られた。これらの弓は特に飾りがないが、同時代から出るニシキギ科ニシキギ属の材を用いた弓は桜の樹皮を巻いた飾り弓で、実用には本種を、儀礼用にはそれらを用いたらしい。

これらは古墳時代頃まで使われたが、弥生時代頃より弓は狩猟用より戦闘用に用いられるようになり、より強くて太いものを求め、もっと太い材から削りだしたり、合わせ木で作られるようにと変化していった。それ以外にも細工物に使われた。

 

  イタヤカエデ(学名: Acer pictum Thunbムクロジ科 板屋楓)

ブナ帯の肥沃な土壌に生える落葉広葉樹で、日本では北海道と秋田、他に朝鮮、サハリン、アムール地方に自生し分布しています。

山地性の樹木で千葉県植物ハンドブックにはオニイタヤが南部で稀にあると記載されていいますが、イタヤカエデの記載はないので、今回マップを作る事から千葉県博物館の尾崎煙雄さんに同定をお願いしたところイタヤカエデとして良いとのお墨付きを頂きました。

この他に県内でカエデの仲間の主な物としてエンコウカエデ、イロハモミジ、オオモミジ、ウリハダカエデ、チドリノキ等があります。

 

  、⑥ スギ (学名:Cryptomeria japonicaヒノキ科 杉)

日本固有種本州北端から屋久島まで自生している常緑高木針葉樹です。。

生育環境は沢沿いなど比較的水分と栄養分に富む環境を好む傾向があり、植林の際にも谷間はスギ、中腹はヒノキサワラ、尾根筋はマツと植え分けられます。

神野寺には大正時代には直径2m程度のスギが仁王門の前に沢山生えていて、大正博覧会には幅6尺(180㎝)長18尺(540㎝)、総玉目の材が出展され、1等賞を得たと言いう歴史があります。実際その当時が想像される、直径2m以上で高さ30m程度の巨木が生えていた事が絵葉書で残っています。又当地には戦前までは製材所、建具屋さんが多くその製材した粉で谷が埋まり植物が長い間生えなかったと伝えられている場所がありました。

鹿野山表門に通じる入り口に、中をコンクリートで保護された杉の木と、青年館の横に、直径2m程度のスギの切り株と思われるものが残っていますが当時の面影をたどる事ができます。

 

  ⑧、⑨、⑩、⑪ スダジイ (学名Castanopsis sieboldiiブナ科 )

 常緑広葉樹で、暖地照葉樹林を代表する樹種で、房総地区で極相林林冠部を形成する代表的な樹種です。近くでは袖ケ浦の坂戸神社の森がスダジイの極相林として完成されていて、森づくりのお手本にされています。

 房総地区では神社の境内など、スダジイの単木の巨木は多いが、当地では6本もの巨樹が集団で見られます。数百年もの間、雨風雪など自然環境に耐えて出来た樹相は見るものを遠い昔に引き込む力を持っています。又それぞれの樹形、幹の空洞、コブの形が出来た経過等を想像しながら見るのも楽しいと思います。

 

*照葉樹林(しょうようじゅりん)とは、森林の群系の一種で、温帯に成立する常緑広葉樹林の一つの型を指す。構成樹種(当地区ではシイノキ類、ブノキ、カシノキ類)の表面の照りが強い樹木が多いのでその名がある。

 

*極相林(きょくそうりん)植物群落は環境との間で絶えず作用と反作用を繰り返しながら、長い年月のうちに次第に変化する。火山活動などで新しくできた裸地に群落が形成され、これが遷移する場合、群落は草本から低木林を経て高木林に発達する。最初に森林を作る植物は強い光のもとで育つ陽樹であるが、陽樹林の臨床では、光が不足するので陽樹の幼木は育たない。このため年月が経過すると陽樹に代わって弱い光のもとでも育つ陰樹が高木層を形成するようになる。このような遷移を経てできた陰樹林は、大きな変化を示さなくなり、極相(安定期の群落)と呼ばれる。

 

 アカガシ (学名:Quercus acutaブナ科 赤樫)

常緑広葉樹では、楕円形で基部は広く鋸歯はなく他のカシ類に比べると葉柄が長く、古木になると幹がごつごつ樹皮が剥がれるのが特徴です。千葉県南部の肥沃な土壌で見られる樹種ですが、当地のアカガシは千葉県内でも大きい方です。

 鹿野山の東京湾側に位置する周南地区の常代遺跡(縄文後期)から出土した、農機具(クワ、田板、臼、杵他)類はアカガシが多く使われていた事が分かりました。出土された農機具の大きさから推測すると鹿野山に生えている大きさと同じアカガシが2000年前にも生えていたことを想像できます。

 

 ホオノキ(学名:Magnolia obovateモクレン科朴の木)

 落葉高木 高さ20m以上、直径1mに達するものもある。枝が少なく、まっすぐな樹形となる。各地の山野に自生し、全体に芳香があり、大きな葉と花、細工がしやすく美しい材など、人の生活の中で広く親しまれてきた。各地の正月や盆の行事の中でも広く登場する。

 葉は芳香があり、殺菌作用があるため食材を包んで、朴葉寿司また、落ち葉となった後も、比較的火に強いため味噌や他の食材をのせて焼く朴葉味噌といった郷土料理の材料として利用される

 

⑭、⑰ イロハモミジ (学名 Acer palmatumムクロジ科カエデ属

 落葉高木である。イロハカエデ(いろは楓)などとも呼ばれる。日本では最もよく見られるカエデ属の種で、紅葉の代表種。。日本では、本州以南の平地から標高 1000m 程度にかけての低山で多く見られる。

ヤマモミジは、日本の北海道・本州(島根県以東の日本海側の多雪地)に分布し、花期は 5月。葉には不揃いの重鋸歯があり、一般にイロハモミジより大きめになるが、変異が大きい。

 

⑮ エノキ(榎、Celtis sinensis)は、ニレ科(APG植物分類体系ではアサ科)

 エノキ属の落葉高木雌雄同株だが、花には雌雄(あるいは両性花)がある。 本州から九州までの広い範囲に自生する落葉樹。大きな緑陰を作るため、各地の一里塚や神社仏閣に植栽され、その巨木が今日でも見られる。日本のほか、中国の中北部、台湾及び朝鮮半島にも分布する。 幹は灰色で直立し、樹皮はケヤキやムクノキのように剥離することないが、表面にはイボイボが多くザラザラする。材は頑丈なためカマツカと同じように農具(カマなど)の「柄」を作るのに使われたことから「柄の木」=エノキと命名されたという説もある。「縁の木」と呼んで有難がり、御神木とする場合もある。

 国蝶であるオオムラサキやヤマトタマムシ、ゴマダラチョウ、テングチョウには欠かせないエサであるがエノキという名の由来には諸説あるが、①信長、家康、秀忠、家光のうちの誰かが、(マツ以外の)「余の木(ヨノキ)」を一里塚に植えるよう命じ、これに応じる形で植えられたのがこの木であったためヨノキが転じてエノキとなった、②縁起の良い木を意味する「嘉樹(ヨノキ)」が転じてエノキとなった 。又エノキは「縁」に通じることから「縁結びの木」あるいは「縁切りの木(縁切りエノキ)」として使う俗信があった。縁を結ぶにはエノキに願をかけ、縁を切る場合は、人知れずそっとエノキの葉を食べるとよいらしい。

 食糧難の時代にはエノキの若菜を米と一緒に炊き込んで「糧飯(カテメシ)」として人間が食べることもあった。また、エノキの実の皮は甘味があり、昔の子供はコレをおやつにした。

株元や枯れ枝にできるエノキダケ寄生する

 一里塚は、徳川家康が秀忠に命じて、1604年より日本橋を起点に1里(約4km)ごとに整備させたもので、エノキの他にも、マツなどが使われたそうです。

 

⑯ ヒイラギ(学名: Osmanthus heterophyllus モクセイ科柊・疼木・柊木)

 太い幹が株たち状となり1本の木で森を思わせる樹形は、風雪に耐え幹折れして立ち上がった証と思われます。ヒイラギの葉は通常は棘が多く触ると痛いが、本樹は棘の着いた葉を探すのが難しく、その事も古木の証です。

柊は古くから邪鬼の侵入を防ぐと信じられ庭の表鬼門(北東)に植えられ、又枝が硬くてしなる事から熟練の石工はヒイラギの幹を多く保有し玄能の柄に使ったと言われています。 

 

 フウ (学名: Liquidambar formosanaフウ科フウ属の落葉高木。楓)

 原産地は台湾、中国南部。日本には江戸時代中期、享保年間に渡来した。

 庭木、街路樹、公園樹として利用される。

 

 イヌツゲ学名:Ilex crenataモチノキ科 犬黄楊)

 名前に「ツゲ」が付くが、ツゲ(ツゲ科)とはが異なり、全くの別植物である。ただ、小さくて厚い葉が枝に密生する様子は確かにツゲに似ている。むしろ植え込みとしてはツゲより多く見かけるかもしれない。

はっきりとした違いは、ツゲは葉を対生するが、イヌツゲは互生である

 

イヌマキ学名Podocarpus macrophyllusマキ科マキ属 犬槇)

 常緑針葉高木関東〜四国・九州・沖縄、台湾の比較的暖かい地域に分布する。千葉県の県木 庭園として又潮風に強い事から南房総地区の生垣に多く使われる。

 

 

 

鹿野山マップ樹木 選んだ理由

No.

樹種名

大きさ 

樹齢

選んだ理由

   

イチョウ

H18m  C6.2m

350

神野寺の正門に位置し、黄葉も美しくご神木として親しまれてきた巨樹である。

   

ヤマグワ

H10m  C2.2m

 

神野寺の境内に、昭和14年に千葉県の巨樹に指定木された樹木があったが数年前に枯損した。

神野寺周辺はヤマグワが多い場所であり、その歴史を引き継ぐ意味もあり選んだ。

   

イヌガヤ

H8m  C1.6m

 

イヌガヤは自然林の中で実生生えが多く見られるが、カヤに比べて大木となる物が少ない。

本樹は比較的大きく観察できる場所にある。

   

イタヤカエデ

H12m C1.9m

150

千葉県自然誌にはイタヤカエデの存在が記載されていないので、千葉県博物館に依頼してイタヤカエデと同定してもらった。

 千葉県内では、珍しい樹木である。

   

スギ

H20m C2.8m

 

 神野寺とスギの歴史は古く、大正時代には直径2m程度のスギが仁王門の前に沢山生えていたと言う写真が残っている。又近年まで神野寺周辺は製材所、建具屋さんが多く営業されていた。

 その歴史を残すためマップに記載した。

   

スギ

H20m C3.5m

250

   

スダシイ

H20m C2.9m

 

 極相林を形成する代表的な樹種で、房総地区では神社の境内など、スダジイの単木の巨木は多いが、当地では6本もの巨樹が集団で見られ事が特徴である。縄文人の主食としてシイの実が食べられたが、古代の暮らしと繋がるロマンある歴史としてシイの巨樹群として選定した。

 

   

スダシイ

H20m C4.5m

 

   

スダシイ

H20m C4.1m

 

   

スダシイ

H20m C5.1m

300

   

スダジイ

H20m C3.2m

 

   

アカガシ

H20m C4.0m

300

千葉県南部の肥沃な土壌で見られる樹種で、当地のアカガシは千葉県内でも大きい方である。

アカガシも古代人の暮らしと関係あり、君津市の常代遺跡(縄文後期)から出土した、農機具(クワ、田板、臼、杵他)類はアカガシが多く使われていた事が分かった。

   

ホオノキ

H12m  C2.6m

 

人家の庭先に生える巨木である。葉が大きく緑陰として、葉はホウバ味噌の素材に使われる。

 

   

イロハモミジ・()

H12m  C2.4m

 

人家の境界沿いに生えている樹木で、樹高が高く庭先のイロハミジと違う樹形が特徴で、他の木と競合して大きくなったと思われる。

 

   

エノキ

H12m C2.1m

 

神野寺周辺は上町(蓑輪町)と下町(閼伽井町)に分かれ昔から多くの参拝客が集まった。本樹は

下町の道路沿いにあるので、往来する人たちの休み場所、1里塚としての役割の樹木であろう。

   

ヒイラギ[株]

H6.0m  C4.7m

 

太い幹が株たち状となり1本の木で森を思わせる樹形は、風雪に耐え幹折れして立ち上がった証と思われる。これだけの古木は珍しいので、白鳥神社との関連があると推察したて選定した。

   

イロハモミジ・()

H111m  C3.2m

 

九十九谷を見渡す公園に植えられている古木である。大正時代本田清六先生が公園設計に関わった歴史があるがその名残ではないかと推察して選定した。

   

フウ

H15m  C1.9m

 

原産地は台湾中国南部。日本には江戸時代中期、享保年間に渡来した。この近くの公園では見る事が出来ないので選定した。

   

イヌツゲ

H2.0m  C1.1m

 

イヌツゲとしては古木であり白鳥神社との関連があると推察して選定した。

   

イヌマキ

H8.0m  C2.2m

 

千葉県の木に指定されているので選定した。